日次レポート対象期間: 2026年5月13日·公開: 2026-05-13·研究・知見トップへ

全国的な出没急増の背景とマクロ統計

日本国内における野生の熊(ヒグマおよびツキノワグマ)の出没は、生態系の変容、里山の過疎化に伴う緩衝地帯の消滅、そして個体数の拡大を背景に、深刻な治安・産業上の危機をもたらしている。環境省が2026年5月中旬までにまとめた2025年度の速報値によると、全国の熊出没件数は5万776件に達し、現在の集計方法となった2009年以降で過去最高を記録した 1。この数値は前年度と比較しておよそ2.5倍、深刻な社会問題となった2023年度の同時期と比べても2倍を超える急増ぶりである 3。

人的被害の規模も拡大の一途をたどっており、2025年度の負傷者および死者の合計は238人に上り、そのうち13人が死亡するという、過往の最高記録の2倍以上となる最悪の統計が示された 1。このようなマクロな背景を踏まえ、2026年5月13日には日本各地の市街地、農地、臨海部に至るまで多様な空間で熊の目撃や遭遇が相次ぎ、行政や住民による防衛策の最前線が報道された。

統計指標2025年度実績(環境省速報値)過去のピーク期との比較
全国熊出没件数50,776件 1過去最多(前年度比約2.5倍、2023年度比2倍超) 3
人的被害者数238人(うち死亡13人) 1過去最悪(死亡者数は従来の最多記録の2倍以上) 1
5月10日時点の山形県内件数140件 4過去最多を記録した前年同期を上回る推移 4

地域別における具体的な出没・目撃事例と影響

北海道地方におけるエゾヒグマの動向と防除需要

北海道内では、エゾヒグマの生活圏への侵入と個体の巨大化、さらには人間に頼らない自律的な防除資材への需要急増が顕著である。5月13日午後7時すぎ、天塩郡豊富町字福永の道路上において、体長約1.5メートルに及ぶヒグマが居座っているのを走行中のドライバーが目撃し、天塩警察署に通報した 6。警察官が現場を確認したところ、道路上に明確な熊の糞が残されており、付近の警戒が急遽強化された 6。北海道内ではこのほかにも、厚岸郡サンヌシ付近で午後1時頃に1頭 8、根室市落石東で午後7時頃に1頭の出没情報がそれぞれ警察から公開されている 8。

都市近郊や臨海部における「アーバン・ベア」現象の具体例として、千歳市水明郷では前日に続き13日朝にも千歳警察署から目撃情報がアナウンスされた 9。さらに、札幌市手稲区前田4条8丁目の住宅街では、一般住宅の庭の花壇から横幅約13センチに達するヒグマのものとみられる足跡が6個から7個発見され、住人からの通報を受けた警察が札幌市と連携して足跡の調査を行うとともに、児童の登校時間帯にパトカーによる巡回活動を展開した 10。また、興部町の国道沿いでは住宅街の近くであるにもかかわらず警戒心を見せずに悠々と歩く個体が目撃されており、地域を徘徊する同一個体への懸念が強まっている 6。湧別町においては、5月8日未明に撮影された体重300キロ超と推定される巨大ヒグマが、設置されたカメラをなぎ倒して住宅街を走り抜けるドライブレコーダーの映像が13日に公開され、冬眠前後の個体が人里へ接近するリスクの凄まじさを実証した 12。

こうした防犯・産業上の危機に直面し、北海道に本社を置く太田精器が開発した野生動物威嚇装置「怪獣狼(モンスターウルフ)」への注文が殺到している 1。この装置は人造毛皮をまとった狼の構造体に、閃爍する赤色LEDの眼、50種類以上の音声効果(人声や電子ノイズを含む)を出力するスピーカーを搭載し、最遠1キロメートル先まで咆哮を響かせる機能を持つ 1。1台あたり約4,000ドルからという高価格帯であるにもかかわらず、2026年に入ってからの注文数は約50筆に達し、例年の年間総数をすでに突破した 1。職人による手作業での組み立てが追いつかず、購入者は2から3ヶ月の納品待ちを余儀なくされているが、その需要層は農家のみならず、高爾夫球場業者や屋外での作業が多い建設業者にまで拡大しており、熊襲撃に対する安全意識の構造的変化を裏付けている 1。

東北地方におけるツキノワグマの頻発と行政の対応

東北各県では、ツキノワグマによる突発的な遭遇事故と、それを受けた行政トップによる異例の警報発令が相次いでいる。

岩手県盛岡市では、5月13日午後4時30分頃、上田字狐森の高松公園ばら園付近において成獣とみられるツキノワグマ1頭が目撃され、北側の上田堤方向へ移動する姿が確認された 13。周辺の緑が丘や高松地区、排水場付近では複数の目撃通報が重なっており、盛岡東警察署はパトカーで現場付近を警戒するとともに、近隣の小学校や高校などの教育機関へ迅速な注意喚起を実施した 14。盛岡市内では5月10日にも東安庭2丁目付近の北上川を熊が泳いで渡る姿が目撃されており、河川敷を移動ルートとした市街地深部への侵入が恒常化している 16。さらに、同県宮古市西ヶ丘の宮古西中学校付近の山林では、午前6時頃に通学・通勤途中の通行人が、木の実のようなものを貪り食べている熊1頭を目撃し、警察が周辺住民への啓発に追われた 14。

秋田県においては、5月13日午後3時20分頃、由利本荘市石脇字下長老沼において車内で休憩中であった30代の男性が、体長約1メートルのツキノワグマが西から東へ逃走するのを目撃した 19。現場は最も近い民家からわずか20メートルほどの距離であり、同市内の石脇公園グラウンドでも人家から約200メートルの地点で体長1.0メートルの個体が佇んでいるのが確認されている 13。由利本荘市では5月5日にも東由利の農地で見回りを行っていた48歳の男性が熊に突如襲われ、顔や背中、右腕を引っかかれて頭部から流血する今年初の人身被害が発生しており、地域における緊張感は極限に達している 19。秋田県内では同日、大館市の路上を東から西へ横断する体長1.0メートルの個体が目撃されたほか、美郷町で草地を捕食したのち隠蔽するようにやぶへ消えた個体が記録され、秋田市、大仙市、にかほ市でも一斉に熊の移動が捉えられた 20。

山形県では、5月10日時点での熊目撃件数が140件と、過去最多を記録した前年同時期を超えるハイペースで推移しており、4月30日から「クマ出没警報」が継続発令されている 4。これを受け、山形県の吉村美栄子知事は13日の定例記者会見において、5月7日に朝日町大舟木の山中で爆竹を鳴らすなど細心の注意を払っていた70代男性が熊の巣穴付近で遭遇し口付近を噛まれて入院した事案や、上山市での人身被害、さらに酒田市の山林で5日に頭部や腕に無数の爪痕を残して発見された高齢男性(久松幸雄さん・78歳と推定)の遺体と近くで駆除された個体との関連性の捜査に言及した 4。知事は「生活の楽しみや趣味、自家消費目的の山菜採りであれば、正直に申し上げてできるだけ入山を控えてほしい」と、県民の行動の自由に踏み込む異例の強い自粛を要請した 4。なお、山形県内では13日午前4時50分頃に酒田市坂野辺新田で目撃されたほか、同日夜には米沢市や酒田市の中心市街地においても新たな目撃情報が配信された 5。

福島県では、午前5時5分頃に二本松市渋川字久保の市道から山林へ入る体長1メートルの個体が目撃されたほか、午後2時15分頃には会津若松市東山町の山林で屋外作業を行っていた70代男性が体長約1メートルの熊と近距離で遭遇した 13。熊はその後山林を登って逃走し、男性に怪我はなかったものの、本宮市岩根などでも同日に目撃が相次ぎ、中山間地域の作業環境の危険性が浮き彫りとなった 13。また、隣接する栃木県那須町の路上においても、同日に熊1頭の出没が確認されている 13。

関東および中部・北陸地方における出没と先進的対策

関東圏および中部・北陸・東海地方にまたがる地域でも、生活圏への緊迫したアプローチと、それに対抗する新技術の実証実験が展開された。

東京都八王子市元八王子町の雑木林では、4月29日午後8時15分頃に設置カメラが捉えた体長1メートルを超えるツキノワグマの映像について、5月10日に地元のハンターから市へ連絡が入り、13日に社会部ニュースとして大々的に報道された 28。この個体はイノシシを捕獲するために設置された罠の餌に誘引され、周辺を徘徊していたもので、これまでに人的被害は出ていないものの、予想だにしない熊の出現に近隣住民は困惑している 28。八王子市は有害鳥獣捕獲許可に基づき、急遽現場周辺へ捕獲用の箱罠を設置する方針を固めた 28。

新潟県内では活発な移動行動が確認されており、午後1時頃に魚沼市堀之内の月岡公園近くにおいて、民家からわずか30メートルほどの距離で体長約1メートルの熊が目撃され、県道町屋越後堀之内停車場線を東方向へ横断して去った 29。また、午前10時50分頃には湯沢町大字神立戸沢の町道戸沢1号線脇の田んぼで体長約1.0メートルの熊が目撃され、西側の山林へ逃走したほか、南魚沼市八木沢の国道17号脇の藪でも目撃が記録された 13。

福井県あわら市二面では、午後3時頃に坂井北部土地改良区丘陵地農業支援センターから南に300メートルほど進んだ山林内において、親子とみられる熊が目撃された 31。あわら市内では令和7年度以降、親離れした若い個体を中心に集落周辺への頻繁な出没が続いており、市役所農林水産課鳥獣害対策室やあわら警察署が主体となり、前日に出没した千束や山十楽地区のデータを含め、生ゴミの野外放置禁止や、建物・作業小屋の扉を慎重に開閉する(中に潜む熊の飛び出しを防ぐため)といった具体的な自衛策の指導に乗り出している 31。さらに、同県高浜町関屋でも同日にリアルタイムの情報が発信されたほか、長野県内でも飯綱町で成獣1頭、安曇野市で親子2頭、上田市で成獣1頭の動きが同日に確認され、山沿いから市街地近傍への拡散が顕著となった 13。

東海地方においては、岐阜県関市の長良川で、ツキノワグマが浅瀬を渡り歩くという極めて異例の事態が連続して発生している 34。4月30日に撮影された体長1メートルから1メートル20センチほどの個体の映像を含め、同地域では計11件もの目撃情報が集中しており、何かの誘引物を探索するような行動を見せている 34。この予期せぬ市街地周辺での出没多発により、地元の小学生の社会科見学が直前で中止に追い込まれるなど、教育活動への直接的な影響が生じた 34。岐阜県内ではこのほか、12日朝に揖斐川町で1頭が目撃されたほか 3、5日前には大垣市赤坂町勝山のシカ捕獲用罠に体長95センチのオスのツキノワグマが誤ってかかり、住宅街に近い地理的条件から山への放獣が困難と判断され銃殺駆除される事案が起きており、県内の目撃件数は4月から5月11日までにすでに75件に達する深刻さである 3。

こうした防衛の限界を打破するため、岐阜県飛騨市の果樹園においては、5月12日より全国初となる先進的な装置の実証実験が開始され、13日のメディアで大きく報じられた 3。これは岐阜大学で野生動物管理を研究する森部絢嗣准教授(46歳)が、カメラ開発企業と共同で開発した「AIベアースプレー(AIBeS:アイベス)」と呼ばれる自律型撃退装置である 3。装置に内蔵されたカメラが接近する動物を捉えると、AIが瞬時に解析し、熊と判定した場合にのみ高濃度のクマスプレーを自動噴射する構造を持つ 3。人間の顔に熊のイラストを貼って近づけた検証では、AIが95%の精度で「人間」と正しく認識して噴射を抑制することに成功した 3。森部准教授は「何もしなければ熊はそこを安全な餌場と学習してしまう。人間活動の場が危険であるとAIに判定させて学習させることが、今後の共生において不可欠である」と述べており、実験は9月末まで実施され、誤作動の条件確認や実用化へのデータ蓄積が行われる 3。

野生動物管理および社会防衛の課題と展望

2026年5月13日に全国で同時多発的に報道された熊出没ニュースの連鎖は、日本の野生動物管理政策が直面する生態学的・社会構造的な変化を浮き彫りにしている。

第一の課題は、熊の行動圏が従来の山林から、河川や道路といったインフラコリドー(移動回廊)を媒介にして都市の内部へと深く浸透している点である。盛岡市の北上川や関市の長良川における目撃、札幌市の住宅街や八王子市の雑木林での罠周辺の徘徊といった事例は、熊が人間の設けた地理的境界線を無効化している現実を示している 10。特に、過疎化によって人と野生動物の境界線であった里山が荒廃し、森林の連続性が市街地縁辺部まで伸びた結果、若い個体や子連れの熊が人間への警戒心を持たずに侵入する傾向が強まっている 31。

第二の課題は、被害防除の担い手不足と、それに伴う防衛テクノロジーへの依存の本格化である。山形県における山菜採り目的の入山に対する強い自粛要請は、個人の鈴や爆竹といった従来型の対策が機能しなくなっている限界を露呈した 4。猟友会の高齢化と減少が進むなか、地域社会の安全を維持するためには、太田精器の「怪獣狼」のような民間主導の防音資材の配備や、岐阜大学が実験を開始した「AIBeS」のような自律型AI技術の導入による「面的な防衛線」の構築へとシフトせざるを得ない局面を迎えている 1。

今後の展望として、単に個体を捕獲・駆除するだけの一時的な対症療法ではなく、人間側の生活空間から生ゴミや放置農作物の残渣といった「誘引物」を徹底的に除去する管理義務を住民へ浸透させることが、新技術の導入効果を最大化するための大前提となる 31。野生動物の個体数や行動パターンのデジタル化と、AIを用いた非殺傷防除システムの広域連携こそが、2026年以降の過疎化日本における野生動物管理の標準モデルになると考えられる。

参考文献

  1. 日本北海道公司生产机器狼吓熊 接大量订单
  2. クマ出没5万件、最多 昨年度全国 捕獲は1万4000頭 | 岐阜新聞デジタル
  3. 画像からAIが判定…全国初の『クマ撃退スプレー自動噴射機』出没が相次ぐ岐阜県内で実証実験始まる | 東海テレビNEWS
  4. 「細心の注意を払ったが」朝日町の山中でクマに襲われた男性の ...
  5. 山形県のツキノワグマ出没マップ2026年8,691件 | クママップ
  6. 道路を横断する体長1メートル超のクマ ドライバーが目撃 現場には ...
  7. 5月13日20時14分頃、天塩警察署が天塩郡豊富町字福永で発生した熊の出没に関する情報を公開 | The HEADLINE
  8. 5月13日14時53分頃、厚岸警察署が熊の目撃に関する情報を公開 | The HEADLINE
  9. 5月13日8時39分頃、千歳警察署が千歳市水明郷で発生した熊の目撃に関する情報を公開
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監修・編集
執筆
AI(大規模言語モデル)による情報集約
監修
獣医工学ラボ(リサーチコーディネート株式会社)
対象期間
2026年5月13日
公開日
2026-05-13
最終更新
2026-05-13

本記事は、公開ニュース・自治体発表・政府公表資料をもとに AI で集約・要約した内容を、獣医工学ラボの獣医師が確認・編集の上で公開しています。事実関係に誤りを発見された場合は contact@research-coordinate.co.jp までご連絡ください。